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私が現在までに入手したサイバーポルノに関する裁判例を資料として掲載します。なお、プライバシーに関わる部分については伏字にしてあります。(それぞれの判決をクリックしてください)
- 【P−STATION事件】
横浜地方裁判所川崎支部平成7年7月14日調書判決(確定)
パソコン通信を利用してわいせつな画像データを見せていた行為に、わいせつ物公然陳列罪を認めた。
- 【MEDIA大阪事件】
京都簡易裁判所平成7年11月21日略式命令(確定)
パソコン通信を利用してわいせつな画像データを見せていた行為に、わいせつ物公然陳列罪を認めた。
- 【ベッコアメ事件】
東京地方裁判所平成8年4月22日刑事第2部判決(確定)(判例タイムズ929号266頁)
インターネットのホームページにわいせつな画像データを掲載していた行為に、わいせつ図画公然陳列罪を認めた。
- 【モンキータワー事件】
札幌地方裁判所平成8年6月27日刑事第3部2係判決(確定)
パソコン通信を利用してわいせつな画像データを見せていた行為に、わいせつ図画公然陳列罪を認めた。
- 【J−BOX事件】
大阪地方裁判所平成9年2月17日第2刑事部判決(確定)
インターネットのホームページに、FLMASKの入手先および使用方法とともにFLMASKを付したわいせつな画像データを掲載していた行為に、わいせつ図画公然陳列罪を認めた。
- 【神戸HD販売目的所持事件】
神戸地方裁判所平成9年3月25日刑事部12係甲判決(確定)
それ自体は販売する目的がなく、バックアップ用としてわいせつ画像データを記録していたハードディスクについて、そのハードディスクを「わいせつ図画」と認定し、これについて刑法175条後段のわいせつ図画等販売目的所持罪を認めた。
- 【京都アルファーネット事件】
京都地方裁判所平成9年9月24日第2刑事部判決(控訴)(判例時報1638号160頁)
パソコン通信を利用してわいせつな画像データを見せていた行為に、ハードディスクを「わいせつ物」と認定し、わいせつ物公然陳列罪を認めた。
→控訴趣意書
→控訴審弁論要旨
→控訴審判決
- 【岡山FLMASK事件】
岡山地方裁判所平成9年12月15日第1刑事部1係判決(確定)(判例時報1641号158頁、判例タイムズ972号280頁))
インターネットのホームページに、FLMASKを付したわいせつな画像データを掲載していた行為について、FLMASKを付していても容易にそれが復元可能な場合はわいせつ性が認められ、また、陳列されたのはその画像データが記録されているハードディスクではなく画像データそのものであり、わいせつな情報そのものが「わいせつ図画・物」に該当するとして、わいせつ図画公然陳列罪を認めた。
- 【ベッコアメ準抗告事件】
東京地方裁判所平成10年2月27日第3刑事部決定(確定)
「被疑事実と無関係な会員のデータまで押収したのは違法」としてデータ差し押え処分の取り消しを求めた裁判で、東京地裁は処分を取り消す決定を下した。サイバーポルノに関する事件で、差押えの違法性を認めたのは初めて。
- 【山形海外送信事件】
山形地方裁判所平成10年3月20日判決(確定)
アメリカに設置されたサーバーにホームページを開設し、日本国内からそのホームページにわいせつな画像データを送信していたケース。
- 【大阪海外送信事件】
大阪地方裁判所平成11年2月23日判決(確定)
上記山形事件と同様に、アメリカに設置されたサーバーにホームページを開設し、日本国内からそのホームページにわいせつな画像データを送信していたケース。
- 【あまちゅあ・ふぉと・ぎゃらりー事件】
大阪地方裁判所平成11年3月19日判決(確定)
日本国内およびアメリカに設置されたサーバーにホームページを開設し、日本国内からそのホームページにわいせつな画像データ(一部マスク画像)を送信していたケース。 【コメント】
→判決要旨
→弁論要旨
- 【東京海外送信事件】
東京地方裁判所平成11年3月29日判決(確定)
アメリカに設置されたサーバーにホームページを開設し、日本国内からそのホームページにわいせつな画像データ(マスク画像)を送信し、日本国内で会員を募り、ダイヤルQ2回線を使用していたケース。本判決で初めて、インターネットがテレビ放送と同じであるとの根拠から、わいせつ画像情報の「送信」が「陳列」であるとされた。
→冒頭陳述要旨
→弁論要旨
- 【京都アルファネット事件(控訴審)】
大阪高等裁判所平成11年8月26日判決(上告)(判例時報1692号148頁)
パソコン通信を利用してわいせつな画像データを見せていた行為に、ハードディスクを「わいせつ物」と認定し、わいせつ物公然陳列罪を認めた一審判決を、ほぼそのまま是認した。わいせつ画像データを送信することがなぜ「陳列」となるのか、つまり、本件事案では刑法典に規定の存在しない「データの頒布」が行われたのに、これを「陳列」として処罰するのは罪刑法定主義違反ではないかという点が争点の一つであったが、本判決はそれについて、ダウンロード可能な状況を設定することは、わいせつ画像データを観覧可能な状態にすることであるから「陳列」に該当するとした。
本判決の論理からすれば、たとえば道端に「わいせつビデオ」と書かれた(わいせつな)ビデオテープを並べて、誰もが自由に持ち帰ることが可能な状況を設定すれば、その段階でわいせつ物公然「陳列罪」が成立することになるのではないか。もしも、行為者が販売目的でこのような行為を行えば、販売目的所持罪(刑法175条後段)として処罰できるが、頒布目的所持罪は規定がなく無罪である。本判決は、このようなケースで、実質的に処罰規定が存在しない「頒布目的所持」を処罰することになり、罪刑法定主義に反することになるのではないだろうか。
なお、学説では、わいせつ画像の閲覧過程が(ブラウザで見えるなど)「自動化」されておれば、テレビと同じであるから、「陳列」となりうるとする見解もあるが、本件事案は、パソコン通信を媒体としたものであり、一旦ダウンロードし、ビューアーを立ち上げてデータを読み込ませた上でないと、わいせつ画像を表示させることはできない。本件では、画像データの表示過程は決して「自動化」されておらす、上記のような学説に従ってもこれを「陳列」と解することは難しいのではないかと思われる。
また、最近では、わいせつ画像データを圧縮ファイルにしてホームページなどに掲載しているケースもあるが、このような場合も同様に上記のような学説からも、有罪を根拠づけることが困難と思われる。
→一審判決 京都地方裁判所平成9年9月24日第2刑事部判決
→控訴趣意書
→控訴審弁論要旨
- 【フロンティア事件】
浦和地方裁判所川越支部平成11年9月8日判決(確定)
パソコン通信ネットワーク「フロンティア」を開設し、サーバーコンピューターの記憶装置であるハードディスク内に男女の性器及び性交場面等を露骨に撮影した画像の性器部分にFLマスクで画像処理を施した画像データを記憶、蔵置させ、電話回線を使用し、右データにアクセスしてきたパソコン通信設備を有する不特定多数の者に右データを送信し、その受信した右画像を画像処理ソフト等を使用すればわいせつ画像に容易に復元閲覧することが可能な状況を設定した事例。
京都アルファネット事件と同様に、パソコン通信を通じてわいせつ画像データを送信していた事案である。本判決でも、これまでの裁判例と同様に、(FLマスクで処理された)わいせつな画像データを送信することがなぜ「陳列」に該当するのかについて、何ら説得的な理由は見られない。認識可能な状況を設定することが「陳列」であるとするが、マスクを復元するというユーザーの行為をどのように考えればよいのか。この点についての納得できる説明がない限り、「認識可能性」という基準だけでは公然陳列罪の成立を根拠づけることは無理である。他の有罪判決でも同じだが、本判決の論理からすれば、(外観は普通のビデオテープと変わらない)裏ビデオの無料サンプルを店頭に並べていたような場合、それについて公然陳列罪が成立することになり、実質的には刑法に規定のない「頒布目的所持罪」を処罰することになってしまう。
- 【FLMASKリンク事件】
大阪地方裁判所平成12年3月30日判決(確定)
本件被告人であるFLMASKの作者が、FLMASKがダウンロード可能な自己のホームページからFLMASKでわいせつ画像にマスク処理をしていた正犯のホームページへとリンクを張り、また正犯も被告人のホームページとリンクを張っていた事案で、わいせつ図画公然陳列幇助罪が認められた事例。
→判決骨子
→コメント
→【正犯の事件】
・「J‐BOX」事件
・「あまちゅあ・ふぉと・ぎゃらりー」事件
- 【岡山レディースナイト事件】
岡山地方裁判所平成12年6月30日判決(確定)
被告人四名が、インターネット上に「レディースナイト」と称するホームページを開設し、リアルタイムでわいせつなショーを不特定多数のインターネット利用者に有料で閲覧させた事案。
「リアルプレーヤー」(映像再生ソフト)を使用すればわいせつ映像を中継することが可能であり、その場合、わいせつな映像データがリアルサーバーに「ところてん方式」で順次送り込まれる。検察官は、わいせつな画像データが一瞬でも記憶・蔵置されたサーバー・コンピュータは「わいせつ物」であるとして、わいせつ図画公然陳列罪で起訴したが、裁判所は、「リアルサーバーコンピューターのメモリ上にパケット化された個々のわいせつ映像のデータが存在する時間は、数ミリセコンドであって、人間の感覚では、時間として全く知覚できない程の極めて短い時間であることに照らせば、パケット化された個々のわいせつ映像のデータは、メモリ上に記憶威置されるのではなく、メモリ上を通過しているだけであると認定するのが相当である」として、わいせつ図画公然陳列罪(刑法175条)を否定し、公然わいせつ罪(刑法174条)を認めた。
- 【横浜わいせつ画像メール添付事件】
横浜地方裁判所平成12年7月6日判決(確定)
電子メールにわいせつ画像データを添付ファイルとして添付し、わいせつ画像を「販売」した事案。
本判決は、わいせつ画像データそのものを「図画」(わいせつ物)と解したのではなく、「本件画像データがインターネットにおける電子メール・システムという媒体の上に載っていることにより、有体物に化体されたのと同視して『図画』に該当すると解することは可能であり、合理的な拡張解釈として許される」とした。また、「販売」という概念は、通常は、物に対する権利である所有権の移転と理解されているが、この点について、裁判所は、「画像データの載っている媒体自体の所有権の移転はないが、電気的信号である画像データの移転は観念することができるから、所有権の移転としての『販売』の構成要件をあいまいにするものではないと考える」として、 データの有料での移転(実態はデータのコピー)を「販売」とした。
本判決は、わいせつ画像データが載っている電子メール・システムが「わいせつ図画」と述べているが、日本語としても、概念としても一体何を意味するのか不明である。また、データのコピーをメール・サーバーに有料で送信することが「販売」といえるか否かについても、さらに検討を要する。
- 【横浜わいせつ画像メール添付事件(2)】
横浜地方裁判所平成12年11月24日判決(確定)
上記と同様に、電子メールにわいせつ画像データを添付ファイルとして添付し、わいせつ画像を「販売」した事案。
本判決も、上記の判決と同様に、わいせつ画像データそのものを「わいせつ図画」と解したのではなく、刑法175条にいう「わいせつ図画」は「有体物」でなければならない、とする。しかし、情報である「わいせつ画像」の「(有料での)送信」が、なぜ「わいせつ図画」という有体物の「販売」となるのかについては、判決文のどこにも書かれていない。
また、情報について「販売」が成立するかについても、「自らのパソコンにあるわいせつ画像と同一のわいせつ画像を有料会員のパソコン上にも表出可能にしたものであって、インターネットを通じ、わいせつ画像情報の入ったファイルを送付したものである。ファイルは一定の内容を保ったまま送付されるのであって、固定性を有し、販売概念を曖昧にするものではない。」と的外れなことを述べるのみで、弁護人の主張に対しては何も回答していない。
さらに、情報そのものを「わいせつ物(図画)」と解した岡山地判平成9年12月15日を引用し、本件事案を処罰することは不意打ちには当たらず、罪刑法定主義に反しないとしているが、この判決は、判例および圧倒的多数の学説によって不当な刑法解釈だとして批判されているものであるから、これをもって不意打ち処罰に当たらないとする点は大いに疑問である。
- 【京都アルファネット事件(上告審)】

最高裁第3小法廷平成13年7月16日判決(刑集55巻5号317頁)
サイバーポルノに関する初の最高裁判断です。
最高裁は、次のように判示しました。
1.わいせつ画像データが記憶、蔵置された、コンピュータのハードディスクが刑法175条にいう「わいせつ物」である。
2.「公然陳列」とは、わいせつな内容を不特定又は多数の者が閲覧できる状態に置くことをいい、わいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にするまでのことは必要ではない。
3.被告人が「ホストコンピュータのハードディスクに記憶、蔵置させたわいせつな画像データを再生して現実に閲覧するためには、会員が、自己のパソコンを使用して、ホストコンピュータのハードディスクから画像データをダウンロードした上、画像表示ソフトを使用して、画像を再生閲覧する操作が必要であるが、そのような操作は、ホストコンピュータのハードディスクに記憶、蔵置された画像データを再生閲覧するために通常必要とされる簡単な操作にすぎず、会員は、比較的容易にわいせつな画像を再生閲覧することが可能であった」。
わいせつ画像が記憶されたハードディスクを「わいせつ物」と解する点は、従来から、ビデオや録音テープを「わいせつ物」としてきた判例の流れにあり、特段新しいものではありません。
問題は、ハードディスクが「わいせつ物」であるならば、本件では、「わいせつ物」それじたいは「頒布」も「販売」もされていないのですから、有罪を根拠づけるためには「データの送信」が「陳列」であるということを論証しなければなりません。本決定は、この点が必ずしも説得的であるとは思えません。
この決定によって、「陳列」の概念がかなり広がったわけですが、「陳列」が「頒布・販売」とどのように区別されるのかが、これからの解釈学的な問題となるでしょう。刑法175条後段は、販売目的の所持だけを処罰しているので、この区別は重要です。
いずれにせよ、明治時代にできた刑法175条をサイバーポルノに適用するのは、かなり無理があると思います。詳しくは、原判決を批判的に考察した拙稿「陳列概念の弛緩」を参照してください。
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